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東京地方裁判所 昭和52年(特わ)4268号 判決

主文

被告会社Aハウジング工業株式会社を罰金一三〇万円に、

被告人Bを懲役一〇月にそれぞれ処する。

被告人Bに対し、この裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告Aハウジング工業株式会社、被告人B両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社Aハウジング工業株式会社は、東京都渋谷区〈中略〉において、建築及び土木工事の請負、設計施工を目的とする株式会社であり、被告人Bは、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人Bは、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空外注費を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五〇年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億七三〇五万五〇二二円(内訳は別紙(一)修正損益計算書のとおり)あつたにもかかわらず、同五一年二月二七日、〈略〉税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇七三万一六八三円でこれに対する法人税額が三四五万二四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六八三八万二〇〇〇円(計算は別紙(二)税額計算書のとおり)と右申告税額との差額六四九二万九六〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(弁護人の主張に対する当裁判所の判断)

(争点)

弁護人の主張は要するに、一、完成工事高のうち、五件の未完成工事分が存在しているので、その収益計上時期を争う、二、未収金のうちには架空売上や貸倒れが存在する。三、旅費交通費のうち、役員賞与とされたフランスへの海外渡航費は、業務遂行に密接不可分の支出であるから損金に算入されるべきである、四、接待交際費のうちに文房具費が含まれている。また、租税特別措置法(以下措置法という)の「交際費等」に該る支出であるか不明である、五、法律上の主張として、交際費接待費の損金算入限度額超過分を益金に算入しているが、右は措置法による一定の政策目的で損金不算入とされたのであり、偽り不正の行為とは何ら関係ないから租税逋脱行為とはならないというにある。

(判断)

よつて当裁判所は、右の弁護人の主張に対し次のとおり判断を示すこととする。

一(完成工事高のうち五件については未完成工事分であるから、その収益は翌期に帰属されるべきであるとの主張について)

(一)  被告人、弁護人は、被告会社の完成工事高のうち、施行主がC、D、E、F及びGにかかる各工事については、昭和五〇年一二月期の事業年度中には完成していなかつたのであるから収益計上時期は翌期に帰属されるべきである旨主張する。

右弁護人の主張の要旨は、被告会社が施工主から賃貸用住宅の建築請負契約を締結すると共に、施工主に対し建物完成と同時に被告会社の子会社であるH商事株式会社(以下H商事という)を借主とする転貸特約つきの賃貸借契約を斡旋し、同建物に居住する者の有無に拘らず、建物完成と同時に家賃収入の確保を保証するということであつたから、してみると、施工主とH商事間の賃貸借契約締結の日と家賃発生の始期である賃貸借期間開始の始期と、工事完成の日とは一致する筈であるべきところ、前記施工主五名を除いては賃貸借契約日と賃貸借期間の始期とは一致しているが、右五名についてはいずれも賃貸借契約の日と、賃貸借期間の始期が一致していないので、特段の理由のない限り、右五名の工事完成時期は賃貸借期間の始期である昭和五一年であつて、本件事業年度ではないという合理的疑いがあるというにある。

(二)  そこで検討するに、〈証拠〉によれば、被告会社は、土地を所有する農家を施工主とし、自ら材料を提供して賃貸用住宅の建築を請負う事業を行なつていたものであり、収益計上の時期については右建物を完成して相手方に引渡した日の属する事業年度において請負による収入を益金の額に算入しており、具体的には建物の鍵を引渡せる状態になつたことをもつて、工事の完成引渡しの時期を判断する基準としていたことが認められる。

そうすると、被告会社の収益計上の時期は、右の引渡しの時期によつて定まつているから、施工主とH商事との賃貸借契約の日とか、賃貸借期間の始期とは関係がないといわなければならない。けだし、被告会社とH商事とは別会社であるから、施工主と被告会社との権利義務の関係は、右両当事者間の建設工事請負契約によつて定まるというべきところ、右契約内容にはH商事との賃貸借契約が何ら包含されていず、右賃貸借契約の締結が最終金の支払の条件となつていないからである。従つて、実際に入居者の定まらないこととか、賃貸借契約日と契約期間とのずれ等については、H商事の問題であつて被告会社の問題でないから、目的物の完成、引渡しの時期を決定するものとはなり得ないし、また、被告人の当公判廷における供述によれば、被告会社では、昭和五〇年に入つてからは実際に工事が完成しても三、四〇パーセントが入居者の決まらない状況にあつたことや、H商事が施工主(家主)と賃貸借契約を締結し、敷金、権利金、賃料を支払いながら、直ちに入居者がつかないため、資金繰りに窮し、被告会社がH商事に代つて家主に立替払したことさえ認められる事情にあつたのであるから、工事の完成、引渡しの時期を推測させる証拠ともなり難い。

(三) おもうに、施工主の直営工事ではない一般の建物建設請負工事の収益計上時期につき、右建物の引渡しを以て認識基準とすることが妥当とされる所以は、特約のない限り、完成した建物を引渡すことによつて施工主に所有権が移転するとともに、請負人において報酬請求権を取得するから、既に、請負契約時において収入すべき工事代金が定つている以上は、右引渡しによる履行の提供があれば、直ちに右代金を請求し取得できるので、右段階に至れば代金債権は権利として確定することとなり、所得の実現があつたものとみられ、たとえ現実に現金の授受がなくとも、法律上何時でも行使できる請求権として担税力を有する財産価値を有するものと認められ収益として認識できるからである。

しかして右の収益計上時期としての引渡しとは、特約のない限り、それが建物であるために、必ずしも現実の占有移転たるを要せず実質的な引渡しをもつて足り、本件のように、鍵を渡せる状態、換言すれば、施工主をして通常の用法に従つて使用し得る状態になつた時を以て引渡しの時と認識することも許容され得る。

ところで一般に建設請負工事は、完成までに長期かつ多額の費用のかかることから、工事代金については、契約成立時、着工時、上棟時等段階的に部分払いがなされ、残代金も完成、引渡時において精算払いとなることが多い。また、右工事につき附帯工事が随伴したり、更に、当初工事契約内容の仕様変更ないし、別途工事として追加工事がなされることも少なくなく、そのうえ、本件工事については当該事業年度に引渡しがなされていても、附帯工事、別途追加工事については翌期に引渡されることもある。

建物の工事完成基準にあつては、収益は原則として、契約目的物全部を引渡した日の属する事業年度の収益とされるので、引渡し前に授受された代金は前受金ないし預り金たるの性質をもつに過ぎないが、しかし、当該事業年度内に契約の内容たる工事の大部分が完成状態にあり、かつ、その引渡しが終了しながら、なお、一部工事が未完成であつた場合においても、右未完成部分が全工事中の極めて僅少に過ぎず、かつ、最終的な仕上げ、ないし付随的なものであつて、完成まであと僅かな時間内に処理可能で、当該事業年度に引続いて容易に完成し得るものと認められるような場合であつて、当年度内に工事代金の全部につき請求がなされていれば、右工事にかかる収益は当該事業年度に帰属すると解するを相当とする。

けだし、右の如き事情が存すれば、たとえ若干程度の工事の残りがあつたとしても、実質的にみれば、工事が当期中に完成し引渡しがあつたものと同視できるので、工事全般を当事業年度内に完成、引渡しを了したものと認めても何ら不合理ではないからである。

また、当該事業年度において工事契約の大部分が完成状態にあつて、施工主と請負業者間において、合意のうえ、実質的に目的物が完成され引渡しがなされたと認められる状況にあつたとして、工事代金の全部が当事業年度内に精算され授受されたような場合には、たとえ追完工事が若干残存して未完成であつたとしても、請負業者にとつてみれば、右代金の取得により契約の目的を達し、施工主からの代金の返還請求もあり得ないし、かつ、右金員を自己のものとして自由に使用し処分し得るので、所得の実現があつたとみることができる状態を生じたものといえるから、特段の事情がない限り、右精算金の授受された時の事業年度の収益に帰属せしむるのが相当である。

更に、工事着手後、契約内容に仕様変更があつて請負金額に変更があれば、勿論、変更後の確定された金額によるべきであるし、また、本体工事の内容とは別個に、別途工事が追加契約され、各工事内容が独立しており、金額も特定されて、代金の支払時期を異にしているような場合には、別途工事自体のみの収益帰属の時期を判断すべきである。

(四)  それでは本件において争われている完成工事高について各検討してみよう。

(1) 施工主がFの工事について、検察官は完成工事高二九五三万二〇〇〇円、完成年月日、昭和五〇年一一月三〇日である旨主張するところ、同人と被告会社との建設請負工事に関する同人からの回答書によれば請負契約代金が二八二九万円、附帯工事一二四万二〇〇〇円合計二九五三万二〇〇〇円であると認められ、昭和五〇年一二月付で建築工事代金最終金九七九万円、附帯工事一二四万二〇〇〇円の合計一一〇三万二〇〇〇円の請求が右Fに対しなされていること、工事代金の支払状況については、昭和五〇年六月二五日に五〇万円、同年八月二九日に八〇〇万円、同九月一三日に一〇〇〇万円の合計一八五〇万円が昭和五〇年事業年度中に支払われ、翌昭和五一年一月一二日には、水道加入金一〇万円の立替分を含め残金一一一三万二〇〇〇円の支払がなされていること、また被告会社の同人に対する売掛台帳によれば昭和五〇年中に合計一八五〇万円の入金があり、差引残高として一一〇三万二〇〇〇円が計上されていることが認められる。

右によれば、施工主Fにかかる工事代金については、昭和五〇年一二月末日において一一〇三万二〇〇〇円の未収金が存在していることになる。

ところで被告人の当公判廷における供述によれば、右施工主Fの工事については、被告会社としては昭和五〇年一二月二五日に最終代金を受領できるものと思つて領収証も同日付で用意していたところ、農協の融資手続の手違いから遅れていたもので、農協の方から支払を延ばされたと思う旨供述している。

そうすると、H商事とFとの契約書によれば、五〇年一二月二五日という日付の上にゴム印で別に五一年一月一二日という日付が押されているのは被告人の当公判廷において供述するように、二五日にH商事の方で署名し、この間が休みの関係で先方から翌一月一二日になつて契約書が戻つて来たものと推認することができる。

しかして、Fの回答書によれば、本体工事が昭和五〇年八月二九日に、ベランダ工事等附帯工事が同年九月二九日に契約されており、〈証拠〉によれば、前者につき八月二九日頃に、後者につき一〇月二日頃に発注されていることが認められる。

これらの事実に併せ、前記一一〇三万二〇〇〇円の最終残金が昭和五〇年一二月中に右Fに請求されていること、右最終残金も、当事業年度末日を過ぎること僅か一二日目の年初の昭和五一年一月一二日には早くも精算されて支払われていることを併せ考えると、右Fにかかる工事については、当事業年度末までには完成し使用できる状態(引渡し)にあつたか、または、仮りに工事未完成部分があつたとしても、それは最終的な仕上げにかかり、極めて僅かな時間内に処理可能な僅少な部分であつたものと推認することができる。

そうすると、昭和五〇年一二月事業年度において請負工事代金一九五三万二〇〇〇円の金額は確定していたものと認められるので、右金額を当事業年度の収益に帰属せしめたことは相当である。

(2) 施工主、Eの工事については、検察官において完成工事高四〇二九万一五〇〇円、完成年月日、昭和五〇年一〇月三一日である旨主張するところ、右完成工事高の金額の全部が昭和五〇年一二月末までに支払われていることが同人からの回答によつて認められ、右工事代金については、同人に対し昭和五〇年一二月付で最終代金の請求がなされ、売掛台帳にも同年一二月二六日現在で残高零として全部入金済であることが認められる。

〈証拠〉によれば、請負工事が少なくとも大部分完成状態にあつた事実が認められ、証人Iも被告会社では入金が八割位あれば工事は完成していたものとみていた(第二一回公判)旨の供述もある。

これらの事実を併せみれば、右Eにかかる工事については大部分完成状態にあつて、施工主との間に工事代金も当事業年度内に全部精算されていることが認められるので、右工事にかかる収益を昭和五〇年一二月期の当事業年度に帰属せしめたことは相当である。

なお、弁護人は、請求書控綴にEに対し請求金額の異なる二通の請求書があることを理由に請求債権の確定がなかつた旨主張するが、それらと売掛台帳、回答書とを対比すれば、右差額一五万円については都市ガス工事切替費を追加請求したものと認められるので請求債権は確定していたものと認めることができる。

(3) 施工主、Gの工事について、検察官は完成工事高一一一八万円、完成年月日、昭和五〇年一二月一五日である旨主張するところ、昭和五〇年一二月付で同人に対し最終代金の請求がなされ、右工事代金の全部が昭和五〇年度中に支払われていること、売掛台帳にも一二月二六日現在で残高零として全部入金済であることが認められる。

前掲同様の証拠によれば、請負工事が前同様に大部分完成状態にあつたこと、及び工事代金が全部精算されていることが認められるので、右工事にかかる収益を昭和五〇年事業年度に帰属せしめたことは相当である。

なお、弁護人は、請求書控綴にGに対し請求金額の異なる二通の請求書があるのは、前記Eと同様に請求権の確定に至らなかつたことを示す旨主張するが、それらと売掛台帳、回答書とを対比すれば、右差額四〇万円については、水道加入金自己負担の為控除したものと認められるので請求債権は確定していたものと認めることができる。

(4) 施工主、Cの完成工事高について、検察官は、四七二八万五〇〇〇円であると主張し、工事完成時期は昭和五〇年一〇月三一日と主張するところ、工事代金については昭和五〇年中に二〇〇〇万円が入金となつているから残金は二七二八万五〇〇〇円であつたと当初陳述しながら、入金状況についてはその後変更し、四一六一万円が入金されているので残金は五六七万五〇〇〇円であつた旨訂正し、右残金は翌事業年度においても入金された否かは明らかではない旨釈明している。

そこで検討するに、売掛台帳によれば、一応検察官の主張にそう完成工事高の金額は窺われるが、しかし施工主Cに対する代金の請求状況をみるに、昭和五〇年一二月一三日付請求書によれば、請求金額が訂正されて二一六一万円とされていることが認められ、施工主Cからの回答書によれば、契約金額三九五八万円、附帯工事二〇三万円(合計四一六一万円)とされており、代金支払については昭和五〇年一一月四日に二〇〇〇万円、同一二月二五日に二一六一万円が各支払われている事実を認めることができる。

右回答書は工事契約書、領収書に基づいて施工主が作成したものと認められるが、前述の請求書と対比すれば、訂正された請求金額である残金二一六一万円と符節するところからも、本件施工主Cにかかる契約は合計四一六一万円であつて、右金額を完成工事高と認めるのが相当である。

前掲売掛台帳の記載は、右請求書によつて訂正される以前のもとの金額をそのまま放置していたものではないかと窺われる。

寧ろ、施工主Cに対する契約金額は、前掲請求書とは別個の、「書直し」として斜線の引かれた昭和五〇年一二月五日付請求書控綴(請求金額二六六八万五〇〇〇円のもの)が存在して、両請求書に記載されている工事内容がそれぞれ異なつているところからみても、請負工事内容に変更があつたために契約金額の変更がなされたものと推認することができる。

しかしてCの回答書によれば、本体工事及び追加工事は、いずれも昭和五〇年五月一日に契約され、右契約金額に見合う金額が叙上のとおり昭和五〇年中に全部支払われ、しかも年末に端数の金額まで付され支払われていることは、その時に代金が精算されたものと認めることができる。

また、下請工事については、〈証拠〉によれば、昭和五〇年七月三一日、及び同年一〇月二〇日に各発注されていることが認められる。

右の事実に併せ、証人Iの当公判廷における供述、被告人の当公判廷における供述を総合すれば、同人に対する請負工事は完成し引渡されているか、仮りに弁護人主張のとおり、ガス工事が残存していたとしても、少なくとも大部分完成状態にあつたものと認められ、かつ、当事者間において合意のうえ、代金も精算されているので、右工事にかかる収益を昭和五〇年事業年度に帰属せしめたことは相当である。

なお、弁護人は、施工主Cに対し前掲請求書に請求金額二一六一万円と訂正され請求されているものの外に、同一人に対して更に最終残金二五二七万五〇〇〇円の請求書が存在するところから、同じ年の同じ月に金額の異なる金額が請求されていること自体不自然であり、工事完成高の金額的確定がなかつた旨主張する。しかしながら、右二個の請求書を対比すれば、前者については昭和五〇年一二月一三日付の日付であるのに、後者は同年一二月八日とされており、そうすると、右八日付の請求書は、一三日付請求書により金額の訂正がなされ、確定した最終残金につき一三日付請求書が再発行されたものとみるのが相当であり、しかも、施工主Cにおいて、昭和五〇年一二月二五日に最終残金としての一三日付請求書に対応する金額の支払がなされ精算されているのであるから、弁護人の主張は採用しない。

以上によれば、なお残金ありとする検察官の主張も採用できないから、従つて、Cに対する完成工事高は四一六一万円と認めるのが相当であり、他に、右金額を超える五六七万五〇〇〇円については、本件全立証によるもこれを認めるに足る証拠もないから、本件完成工事高から右金額を控除することとした。

(5) 施工主、Dの完成工事高については、検察官は五六二〇万円であると主張し、工事完成時期は昭和五〇年一〇月三一日である旨主張するところ、施工主Dからの回答書によれば、契約金額は本体工事五二〇〇万円、追加暖房設備工事四二〇万円の合計五六二〇万円であることが認められる。

右につき被告人は、当公判廷において、右建物は独身寮であつて、H商事を介して入居する者の予定は翌事業年度である昭和五一年四月からであつたので、工事も急ぐ必要がなかつたため、早くとも同五一年一、二月の完成を目途に進めていたものである旨申立てている。

そこで検討するに、昭和五〇年度完成工事高内訳によれば検察官主張の日時に工事が完成した旨記載され、昭和五〇年一二月付で施行主Dに対し最終残金二四〇〇万円の請求がなされていること、DとH商事との間の賃貸借契約も同年一二月二〇日付で締結されていることが認められ、これらの事実のみからすれば一応検察官の主張にそうかの如きものともおもわれる。しかしながら、公表の昭和五〇年度工事完成高の記載については、証人Iの当公判廷における供述によれば、被告会社の女子社員の申立てに基づき作成きれたものであるが、同人は記帳を担当していたにとどまり引渡しを確認する資料に基づいて作成したものではなく、しかも、右公表記載中には、次年度の昭和五一年度完成工事高である施工主J、KおよびLの各工事も混入されているので、右記載を直ちにそのまま信用することはできない。

証人Iも、施工主Dの分については昭和五〇年当事業年度中に完成したかは微妙である旨供述している。

また、検察官の主張する工事完成時期を超えた昭和五〇年一一月六日付にて外部工事が発注されている事実も認められる。

更に、下請業者に対する支払状況をみても、未払金として本体工事につき二三八一万四〇〇〇円、追加工事につき、一〇〇万円を支払つたのみで契約金二九五万円のうち一九五万円の未払いが認められ、仮設経費についても七七万円が未払金として翌五一年二月一〇日に支払われていることが認められる。これらの事実は、工事が全部完成、引渡されていなかつたのではないかとの疑いを否定できない。

また施工主Dに対し、最終残金二四〇〇万円の請求のなされていることは認められるが、しかしながら右Dの回答書によれば、本体独身寮工事につき、契約月日、昭和五〇年六月二四日、契約金額、五二〇〇万円であり、追加暖房設備工事につき、契約月日、昭和五〇年一〇月一五日、契約金額、四二〇万円であること、代金の支払条件については、本体工事につき、契約成立時、八〇〇万円、第一回、一四〇〇万円、第二回、第三回に各一五〇〇万円を、追加工事については「完了時払」であることが認められ、実際の支払月日については、昭和四九年一一月一日二〇万円(預け金、建築時契約金に充当)、昭和五〇年六月二四日八〇〇万円、同八月一二日一四〇〇万円、同月二六日一五〇〇万円、同一二月二〇日一二〇〇万円、同月二五日三〇〇万円の各支払がなされ、翌事業年度である昭和五一年三月三一日に四〇〇万円の支払いがなされていることが認められる。

右によれば、追加工事については、工事の完了した時に支払う約定であつたものであり、しかも、右支払日時が翌事業年度の昭和五一年三月三一日であつたことや、これと前掲各事実並びに被告人の当公判廷における申立てとを併せ考えれば、果して前記請求書記載の最終残金の請求がなされたことを以つて、検察官の主張する右金額を全部取立てることが法律上可能にして直ちに行使し得る債権であつたか疑問である。

更に、H商事との賃貸借契約書によれば、昭和五〇年一二月二〇日付であることは認められるが、賃料支払のための始期が昭和五一年一月二一日であるとされていることや、右賃貸借契約の存在は、叙上説示のとおり、本件引渡しを認定する証左とはなり得ないのみならず、被告人の当公判廷における供述によれば、被告会社において請負工事代金最終残金を請求するための手段として、また、施工主側としても賃料を早く得る必要から作成されたものと窺われるから、右契約書の存在は本件引渡しの時期を左右し得ない。

以上の各事実を総合すれば、検察官の主張する完成工事高五六二〇万円の金額については、工事がすべて昭和五〇年事業年度中に完成し引渡したものとして認定することは困難であり疑わしいといわざるを得ない。

しかしながら、本件施工主Dの工事については、被告人も当公判廷において「ほぼ九分近く進行しておりました」と供述しているように、目的物の工事が大部分終了している段階であることは認められる。しかも、本件工事契約は、本体独身寮工事と追加設備工事との二口に独立して分かれており、契約内容、契約日時も異にし、前者の契約金額五二〇〇万円については、昭和五〇年一二月末日迄に五二二〇万円が支払われ、その全部が支払済であることは叙上認定のとおりであり、後者の契約金額四二〇万円については、支払条件は「完了時払」として翌昭和五一年三月三一日に支払われていることが認められる。

そうすると、当事業年度内に契約の大部分の工事が完了し、契約の一部が未完成ではあるが、しかし、右契約の内容をみれば、各別個独立の契約として存在し、契約事項を特定すれば、その部分の代金の全部が入金されていると認められるような場合には、その限度において、施工主と請負業者との間において、授受された部分に見合う工事は完成し引渡されたものとみて代金を精算したものと推認し得る。従つて、本件Dにかかる工事については、右授受された代金に対応する工事高を以て当事業年度の収益に帰属するものと解するを相当とする。

よつて、施行主Dにかかる完成工事高は、本体工事分五二〇〇万円と認められ、追加工事分四二〇万円については翌期の収益に帰属することとなるので右金額を控除することとなる。

ところで、右追加工事については、これに対応する外注費としてM株式会社に対し二九五万が存在するので、追加工事を収益から控除する関係上、右金額も本件外注費から控除する必要がある。

しかして、修正損益計算書に記載された各勘定科目は、具体化された訴因として攻撃防御の対象たるべきものであり、外注費という損金の一部減額は被告人に対し不利益を及ぼすので訴因変更の要否が問題となる。しかしながら、前記完成工事高から控除した四二〇万円の次期収益と、当該外注費部分の損金とは、税法における費用収益対応の原則上、相互に直接関連する関係にあるから、当然に右収益と損金の各項目を一括して考慮しなければならず、また、被告人、弁護人の主張自体において、本件のように完成工事高を争う場合には、益金の具体的項目を減ずることの主張のみならず、損金の具体的な対応項目の金額を削除されまたは減額されても差支えないとの趣旨を含むものというべきである(弁護人も「費用収益対応の原則に照らしても収益に対応するそれぞれの経費は、その収益の削減があれば当然されるべきものと思料する」旨釈明している(公判期日における弁護人の釈明))。従つて、被告人の防御に何等実質的な不利益も与えることがないので訴因変更の手続を要しないと解すべきである。

以上のとおりであるから、施工主Dにかかる工事については収益の完成工事高から四二〇万円を控除するとともに、損金としての外注費から二九五万円を控除する結果、差引一二五万円を逋脱所得金額から控除することとした。

(五)  (外注費のうちNにかかるガスボンベ二八万円について)

検察官主張にかかる外注費のうち、施工主N分合計四七三七万四〇〇〇円について検討するに、右金額のうち昭和五〇年四月七日ガスボンベ二八万円をO建設に発注した旨主張しているが、外注費調査書によれば一応検察官の主張する金額の記載は存在するも、しかし右調査書は被告会社の発注伺書控によつて作成した旨「外注費調査の経緯」において明らかにしているところ、右発注伺書控によれば、ガスボンベは一四万円であることが認められる。他に右二八万円を認めるに足りる証拠はなく、この点につき検察官は、右の数額については記載誤りとおもわれるが、あえて訴因を変更して逋脱所得金額を増加するつもりはない旨釈明しているので、右差額一四万円については、被告会社の利益に訴因「調整勘定(1)」として計上することにしたため逋脱税額に影響はないこととなる。

二(Pにかかる完成工事高(未収金)の一部が架空売上であり、かつ貸倒も存在するとの主張について)

(一)  弁護人は、検察官において被告会社の本件事業年度中に売上(完成工事高)に計上され益金の額に算入された金額のうち、その一部が未収金であるものにつき、その後、被告会社が債権放棄をしたが、その中には架空売上(完成工事高)が計上されているのがあり、具体的には、施工主Pの工事代金二七万九〇〇〇円については、施工工事ミスの補償サービス工事としてなした追加ブロック塀工事であるから工事代金は発生しなかつたものである旨主張する。

(二)  そこで検討するに、売掛台帳によれば、本事業年度末において施工主Pに対し二七万九〇〇〇円の未収金が計上されており、一応検察官の主張にそうかの如き記載は存在する。

しかしながら、右施工主である証人Pの当公判廷における供述によれば、被告会社に請負わせた建物が隣家と近接し過ぎて苦情が生じたため、その補償として無償にてブロック塀を建設するという被告会社係員の申出があつたので工事をして貰つたが、その後、無償では申し訳けないからということで、結局、一〇万円を支払うということにより被告会社の係員との間で合意が成立したが、その合意した時期は、年が明けた昭和五一年の三月頃とおもう、右ブロック塀工事は本体のアパート工事の契約内容には入つていないし、二七万九〇〇〇円という金額も昭和五三年頃、右金額の債権を放棄する旨の内容証明郵便が来るまで全く知らなかつたし、それまで請求されたこともなく、勿論支払うつもりはない旨供述している。

右供述によれば、本件ブロック塀工事は本体工事とは別個の契約であつて、工事が有償として金額につき少なくとも一〇万円として当事者間に合意が成立したのは、早くとも翌昭和五一年三月頃と認められ、当事業年度中には、被告会社係員からの無償という申出があつたため、未だ代金請求権は発生していなかつたものと認められる。検察官主張の二七万九〇〇〇円の金額についても、昭和五三年に至つて始めて右Pに対し請求されたものと認められ、前掲売掛台張の記載は証人Pの供述と対比し信用できない。

そうすると、たとえ本件事業年度中にブロック塀工事が完了、引渡しがなされたとしても、右工事にかかる代金債権は未だ発生していなかつたのであるから、このような場合には、請負収益が未確定であるとして収入を見積計上するというわけにもいかないので、従つて、当事業年度中には権利が確定せず、所得の実現がないから、収益は生じていなかつたものと解するのが相当である。

よつて、右工事代金二七万九〇〇〇円については、完成工事高に計上すべきではなかつたので右金額を控除することとした。

(三)  その余の工事代金の未収金については、弁護人は貸倒損失の主張をしているが、被告人の当公判廷における供述によれば、債務者たる施工主はいずれも支払能力があるが、被告会社において営業政策上未収金の取立てを差し控えていたことが認められ、また、当事業年度中には右債権の放棄をした事実も認められないので(〈証拠〉の内容証明通知の日付はいずれも昭和五三年一二月二五日付のもの)、貸倒損失は当事業年度中には発生していないといわざるを得ない。従つて弁護人の主張は採用しない。

三(役員賞与損金算入額について)

弁護人は、役員賞与損金不算入額のうち、渡航先フランスの分、一二五万円については、被告会社がQクラブを設立してレジャー施設・保養施設のプランを練つていたから、被告人のフランス行きは右業務のための出張に密接不可分な支出として損金に算入されるべきであつて、逋脱所得を構成する損金不算入とすべきではない旨主張する。

そこで検討するに、被告人の当公判廷における供述によれば、フランスへ行つたのはQクラブという名称の会員制のレジャークラブとして保養所などをつくるべく、そのためにはフランスの施設等を見て参考とし、工事を施工した農家の人達に会員として入会して貰い、資金を集めてレジャー施設を作るためであつた旨供述している。

また、被告人は査察官に対し、フランスの渡航は、パリーフリータイム一般旅行であり、参加人員八〇名、シャトー見学、市内アパルトマン、「地中海クラブ」等を見学し、費用は渡航費三五万円、土産代七五万円、買物二〇万円、その他個人的費用が三〇万円であつたこと、観光ビザで旅行し、いずれも親睦をかねている旨供述している。

なお被告人は当公判廷において、被告会社が施工主から請負つた建築工事を遂行するについては、外国へ行つてみる必要はなく、また外国へ行かなければわからないことはない旨供述している。

以上を総合すれば、フランス渡航については会員制のクラブをつくり、資金集めをする目的をももつた親睦のための観光旅行であと認めるのが相当である。

検察官は、被告人Bにおいてアパート見学等をした旨供述していたので、渡航費三五万円のみを損金としての旅費交通費と認め、個人的出費である一二五万円のみを役員賞与の額とした旨主張する。

しかしながら、被告会社のような民間の共同住宅工事を請負う業務を遂行する場合に、旅行先であるフランスのような外国のアパートを見学しなければならない程、それが通常かつ一般に必要なものと到底おもわれない。

しかのみならず、被告人はQクラブの会員募集、会員用のレジャー施設等を計画していたというのであるから、そうだとすれば、それは被告会社ではなく、H商事株式会社の事業とみるのが相当である。そのことは、「Qクラブ会則」二条によれば「クラブはH商事株式会社(以下会社)という)が経営もしくは事業提携するレジャー施設並びに貸別荘を利用して、会員相互の親睦とヒューマンライフの回復を図ることを目的とします」との記載のあることに徴しても明らかである。

また、弁護人は、社長勘定メモに旅行積立金二一万一〇〇〇円の記載のあることを根拠として、被告人が役員報酬より控除されていた旅行積立金があることから、渡航費の簿外支出の中には簿外旅行積立金が充てられていたとおもわれるので、フランス渡航費を役員賞与とすべきではない旨主張する。

しかしながら、右メモの記載のうち「社長」勘定分と「預り金内訳」勘定分とが別個の勘定項目とみるべきことは、預り金内訳記載の各項目の金額が社長個人とみるにしては余りに多額に過ぎることからもいい得るし、また、右メモの記載と、賃金台帳、総勘定元帳とを対比すれば、旅行積立金二一万一〇〇〇円の記載を含めて「預り金内訳」欄は社員全員の分を記載したものと推認するのが相当であるから弁護人の主張は採用しない。

ところで、検察官において「渡航先フランスの旅行は本来観光旅行であつて、厳密に言えば、法人の業務の遂行上必要なものであるか疑問の余地もあるが、被告人がアパート見学等をした旨供述していたので渡航費三五万円のみを旅費に認め、個人的出費であることが明白な一二五万円のみを役員賞与の額とした」旨主張している点については、本件フランス旅行が、叙上認定のように、親睦が、直接の目的で行なわれた以上、被告会社に対し渡航費三五万円のみを旅費交通費として損金に計上すること自体も妥当ではないといわざるを得ない。

しかしながら、検察官において、右金員は役員賞与から除外し旅費交通費として計上しており、訴因変更して逋脱所得を増額する意図も認められないので、同額を「旅費交通費」から控除するとともに、被告人の利益に、同一金額を訴因「調整勘定(2)」として計上することとしたため、この部分に関する逋脱額につき影響はない。

四(交際接待費勘定のうちRにかかる六万二五二〇円について)

(一)  弁護人は、本件交際接待費勘定のうちに文房具の購入費が含まれており、右は交際接待費に当たらない旨主張するところ、検察官の主張する同勘定を検討するに、右のうち支払先がRとして六万二五二〇円が存在し、総勘定元帳によれば、昭和五〇年五月八日Rに対し同金額を支払つたこと、〈証拠〉によれば、同年五月一二日Rに対し同金額を支払つた事実が認められ、数額については一応は検察官の主張にそうものと認められる。これに対し被告人は当公判廷において、Rが交際費等に入つていることにつき、右Rは横浜の文房具店と思う旨供述しており、右Rは総勘定元帳中の事務関係費勘定、消耗品費勘定等にも支払先として同社が計上されている事実が認められる。

ところで交際接待費勘定には法律上損金算入の限度計算があるところから、特に本件交際接待費に計上された支払先のRが前掲事務関係費のRとは異なるとする事実が本件全立証によるも認められないので、被告人の利益に右Rに対する支払金額六万二五二〇円については交際接待費から減ずるとともに、事務関係費に加算することとした。

しかして検察官は交際費限度超過額につき、当期増減金額一一〇八万七三五一円、差引修正金額二〇四七万七〇二七円を主張しているが、前記R六万二五二〇円を交際接待費から減算することとなるため、その結果、当期増減金額一一〇二万四八三一円、差引修正金額は二〇四一万四五〇七円となる。

(二)  なお弁護人は、その余の経費内訳控等に「交際費」「交際接待費」「接待交際費」の名称で金額が記載されているものにつき、これを接待交際費に含ましめているが、しかし、その内容は不明であるから、措置法にいう「交際費等」に当たらない旨主張する。

しかしながら、被告会社において少なくとも交際費名義で支出し社外流出したことは明らかであること、被告会社の事業内容、支出金額の程度、時期、支払方法や、被告人の当公判廷における供述によつて判明した、きよう応や贈答等の態様、被告会社の各出張所に指示した「交際費について」のメモ等を併せみれば、被告会社において、業務遂行上必要な費用として、業務に関係のある者に対し、接待、きよう応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出したものと推認することができる。従つて、右支出は措置法にいう「交際費等」に含まれるものといい得る。

五(交際費の損金算入限度額超過分は租税逋脱行為を構成しないとする法律上の主張について)

弁護人は、本件公訴が交際費の損金算入限度額超過分を益金に算入しているが、交際費は本質的には必要経費として損金の額に算入されるべき性質のものであるが、措置法六二条によつて一定の政策的配慮により損金算入が認められないとされているのであるから、それは偽り不正の行為との間には何らの関係もないので租税逋脱行為とはならない旨主張する。

租税逋脱犯は故意犯であるから、法人税逋脱の認識を必要とし、逋脱税額算定の前提となるべき所得を構成する益金、損金勘定のうち、行為者において右勘定項目にかかる取引の認識を欠き逋脱の犯意の認められない部分があれば、その部分に限つて逋脱所得より控除すべきものと解すべきところ、本件において、行為者に交際費としての性質を有する支出である事実の認識に欠くるところがあれば格別、そうでなければ、右の支出額につき一定限度を超える額の損金算入が否定される法律の規定の存する以上は、仮りに右規定の存在を知らなかつたとしても、それは法の不知に過ぎず、しかも、通常会社を経営したり、経理に携わる者としては、当然に知り得べき事柄に属するから、そのことは犯意に影響はない。

しかして租税逋脱犯の構成要件該当行為としての「偽りその他不正の行為」には、所得を秘匿する行為を伴つて虚偽過少の申告をすることもこれにあたるというべきところ、被告人は、交際費としての性質をもつ支出たる認識を有し、かつ、逋脱の意図をもつて経理担当者Iに対し、利益を調整し所得を秘匿するよう指示し、右指示を受けた右Iをして、右交際費限度額の一部を他の費用項目に振替操作させたうえ、同人によつて作成された本件確定申告書が正しい所得を記載したものではなく、右申告書記載の金額を上回る所得の存在につき、それを概括的にも認識しながら、これを了承して所轄税務署長に右申告書を提出したことが認められるのであるから、本件交際費の損金算入限度超過額は逋脱所得を構成するといわなければならない。

六(被告会社の実際所得金額、税額)

以上によれば、(一)完成工事高のうち(1)D分につき四二〇万円を、外注費につき二九五万を各控除し、(2)C分につき完成工事高から五六七万五〇〇〇円を控除する。(3)P分につき完成工事高から二七万九〇〇〇円を控除する。(二)次に交際接待費勘定のうちRにかかる六万二五二〇月については事務関係費と認められるので、同額を交際接待費及び交際費限度超過額から控除するとともに、損金である事務関係費に加算した。

その結果、右合計金額七二六万六五二〇円を控除すれば、被告会社の当事業年度における実際所得金額は、一億七三〇五万五〇二二円となり、その税額は六八三八万二〇〇〇円となる。

従つて、右金額を超える部分は本件公訴提起された逋脱額から控除することとした。

(法令の適用)

一、被告会社につき

法人税法一五九条一項、二項、一六四条一項。

一、被告人につき

法人税法一五九条一項(懲役刑選択)。

刑法二五条一項。

一、訴訟費用の負担につき

刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条により被告会社Aハウジング工業株式会社、被告人B両名に連帯負担。

よつて主文のとおり判決する。

(松澤智)

別紙(一)、(二)〈省略〉

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